新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・あら玉 NO.321

新日本酒紀行「あら玉」
蔵創業は1797年 Photo by Yohko Yamamoto

新日本酒紀行 地域を醸すもの NO.321「あら玉

山形県西村山郡河北町

8代目の遺志を継ぎ、改良信交の酒造りに情熱を注ぐ婿杜氏』

 (本文)
 全国新酒鑑評会で、昭和の末にはゼロに近い金賞が、2023年は20蔵も受賞し全国一に輝いた山形県。この美酒の礎を築いたのが、山形県研醸会の初代会長で和田酒造8代目の和田多聞さんだ。
岩手県は南部杜氏、秋田県は山内杜氏という酒造りの技術集団があるが、山形は各蔵独自に行い情報交換や技術研鑽が皆無。

 多聞さんは将来を危惧し、当時の山形県工業技術センターの小関敏彦さんに協力を仰ぎ、研醸会を設立。技術向上に尽力した。

 多聞さんが情熱を注いだのはもう一つ、酒米・改良信交(かいりょうしんこう)の復活だ。うまい酒が醸せるが、草丈が高く栽培が困難で絶滅寸前。種もみを持つ農家を探し、契約栽培を行う。だが21年、多聞さんは75歳で急逝してしまう。

 その遺志と醸造を引き継いだのが、和田茂樹さんだ。沖縄県生まれで、ノーベル賞候補の遠藤章教授に憧れ、東京農工大学発酵学研究室に進学。同級生だった多聞さんの一人娘、弥寿子さんが飲ませてくれた「あら玉」で日本酒のおいしさに開眼する。大学院で農学博士を取得し、「満足するまで、勉強してから」結婚、婿入りし、杜氏になった。
 「酒造りは毎年1年生」と茂樹さん。実験室と違い、環境と米の質が毎年変わり苦戦する。「無菌室も高温高圧滅菌もない時代に、雑菌が入り込めない環境を構築した先人の技術に驚きます」と、寒造り技術をリスペクト。真冬の河北町は外気温-12℃、蔵内-1℃になる酒造りの好適地だが、「19年たっても寒さに慣れません」と苦笑い。

新日本酒紀行「あら玉」
↑「あら玉 特別純米 改良信交」
和田酒造・山形県西村山郡河北町谷地甲17
●代表銘柄:あら玉、月山丸、啓翁桜、谷地男、玉彦、鬼王丸
●杜氏:和田茂樹
●主要な米の品種:改良信交、雪女神、出羽燦々、出羽の里、山田錦

新日本酒紀行「あら玉」
蔵のシンボル!歴史あるレンガの煙突 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
蔵入り口 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
酒米・改良信交 Photo by Wadasyuzo
新日本酒紀行「あら玉」
9代目の和田茂樹さん Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
蔵人と妻の弥寿子さん(前列) Photo by Wadasyuzo
新日本酒紀行「あら玉」
釜場 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
蒸し米風景 Photo by Wadasyuzo
新日本酒紀行「あら玉」
蒸し米を掘る Photo by Wadasyuzo
新日本酒紀行「あら玉」
麹室の扉 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
麹蓋 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
分析室 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
昔の「あら玉」の看板 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
手作りの瓶干し Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
明治築の仕込み蔵。屋根はトラス工法 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「あら玉」
明治築の仕込み蔵には、タンクがずらり Photo by Yohko Yamamoto