新日本酒紀行地域を醸すもの「鷹勇」TAKAISAMI

鳥取県東伯郡琴浦町

酒蔵外観　Photo by Yohko Yamamoto

『若手が元気に醸して好調！

中国地方最高峰の大山の東北側にある船上山は、平安時代に山岳仏教が栄え、後醍醐天皇の倒幕きっかけの地だ。その麓の琴浦町で、1872年に創業した大谷酒造は、山々からの豊かな伏流水を使い、地元産の山田錦や強力（ごうりき）、玉栄（たまさかえ）などを主に、食事に合う辛口酒を醸す。

代表作は「鷹勇純米吟醸なかだれ」で、2007年まで杜氏を務めた「現代の名工」で出雲杜氏の坂本俊さんの味を代々受け継ぐ。今の杜氏は、18年に36歳の若さで抜てきされた中元啓太さん。広島県の大手蔵にいたが、手造りで醸したいと大谷酒造へ飛び込んだ。

蔵元の大谷修子さんは、職場の改革をコツコツと進めてきた。その右腕となり、采配を振るのが異業種から転職した専務の大橋幹弘さんだ。蔵人は女性を含む30代以下に若返り、酒造技能士の資格を全員が取得。工程を全員で共有し、「責任仕込み」という名で、1人が1本のタンクを担当。

酒質は徐々に上がり、23年、広島杜氏組合自醸酒品評会で大吟醸酒が1位に。その酒は全国新酒鑑評会でも入賞し、令和5年広島国税局清酒鑑評会吟醸酒部門でも優等賞と、トリプル受賞を果たした。

地酒に注力し、鳥取県の酒米強力の純米吟醸を高品質化し、人気の辛口を特辛、超辛、極辛の3種類で発売。酒蔵見学も積極的に受け入れ、若き蔵人が生き生きと説明する。二十世紀梨の果樹から採取したラカンセア酵母で醸した純米酒も発表して注目も。町の自然風土を酒から発信。小さな蔵の挑戦は続く。

↑『鷹勇純米吟醸強力』
●大谷酒造・鳥取県東伯郡琴浦町浦安368
●代表銘柄：鷹勇純米吟醸なかだれ、鷹勇特別純米酒、鷹勇純米吟醸超辛
●杜氏：中元啓太
●主要な米の品種：山田錦、強力、玉栄、五百万石

坂本杜氏の標語　Photo by Yohko Yamamoto

目に見えぬ　火落ち菌がいる　そこかしこ

坂本杜氏の標語より　Photo by Yohko Yamamoto

全量県産米を使用　Photo by Yohko Yamamoto

精米機　Photo by Yohko Yamamoto

山田錦　Photo by Otani Shuzo

甑　Photo by Yohko Yamamoto

放冷機　Photo by Yohko Yamamoto

麹室　Photo by Yohko Yamamoto

特注のデニムの作業服　Photo by Yohko Yamamoto

酒母室　Photo by Yohko Yamamoto

元気な酒母　Photo by Yohko Yamamoto

クラシックが流れる仕込み蔵　Photo by Yohko Yamamoto

仕込み蔵　Photo by Yohko Yamamoto

搾り機　Photo by Yohko Yamamoto

酒粕　Photo by Yohko Yamamoto

搾りたての酒　Photo by Yohko Yamamoto

社長の大谷修子さん（左上）、右隣が杜氏の中元啓太さん　Photo by Otani Shuzo

受賞酒の大吟醸　Photo by Yohko Yamamoto

同一醪でなかだれは純米吟醸、それ以外は特別純米になります。　Photo by Yohko Yamamoto

季節限定の純米にごり、爽快！　Photo by Yohko Yamamoto

辛口3種類　Photo by Yohko Yamamoto

専務の大橋幹弘さん、異業種から酒蔵へ　Photo by Yohko Yamamoto

●鷹勇酒造　https://takaisami.co.jp/

日本酒と食のジャーナリスト　山本洋子