新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・神蔵 NO.332

新日本酒紀行「神蔵」
酒蔵外観 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行 地域を醸すもの・神蔵 NO.332

京都府京都市左京区

『京都の街中で最古の酒蔵が挑む、

見て飲んで買える新スタイル』

京都御所の東方、鴨川近くに立つ松井酒造は、酒造りが見学でき、その場で飲めて酒が買え、英語もOKとあって国内外の観光客に大人気。
創業は1726年に兵庫県香美町で、江戸末期に京都へ移る。決して順風満帆ではなく、幕末の混乱時は元治の大火で蔵が焼失。路面電車の工事で移転を余儀なくされ、良い水を求めて13代目が現在地へ。酒は金閣寺はじめ寺社仏閣から用命を受けたが、地下鉄が蔵近くまで迫り、水質が保てないと判断して酒造りを休業。蔵はマンションになった。

2009年、14代目の松井八束穂さんが酒蔵復活を決意。「一緒に酒造りするぞ」と当時大学生の息子の成樹さんに宣言。井戸を深く掘り質の良い軟水を得て、1階を酒蔵に改装。小型の醸造設備を集めて空調設備を調え、四季醸造も可能に。成樹さんは、伏見の黄桜の手作り蔵で修業した後、松井酒造で能登杜氏に付いて酒造りを2年間行う。12年に杜氏、19年に社長へ就任し、15代目松井治右衛門の名を踏襲。

大切にするのは地域色だ。酒米は京都産の祝を主に、高品質な無濾過生原酒「神蔵」ブランドを立ち上げ、大原産のシソで日本酒リキュールを商品化。酒粕はジンの原料として再利用し、太陽光発電を設置。その取り組みにより、持続可能な社会を形作る企業として、京都市の「これからの1000年を紡ぐ企業認定」を受けた。「愛される酒になれ、悦ばれる酒になれ」が信条の酒造り。創業300年を目前に京都の酒で未来へつなぐ。

新日本酒紀行「神蔵」
↑代表銘柄「純米 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒 ルリ」
松井酒造・京都府京都市左京区吉田河原町1-6
●代表銘柄:神蔵、富士千歳、京千歳、金瓢
●杜氏:松井治右衛門
●主要な米の品種:祝、山田錦、五百万石
新日本酒紀行「神蔵」
店内カウンター Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
試飲機は3台 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
店内 Photo by Matsuishuzo
新日本酒紀行「神蔵」
高名な神社仏閣御用達 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
奥の扉が醸造場 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
仕込み室 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
洗米作業 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
米を蒸す Photo by Matsuishuzo
新日本酒紀行「神蔵」
放冷 Photo by Matsuishuzo
新日本酒紀行「神蔵」
櫂入れ作業 Photo by Matsuishuzo
新日本酒紀行「神蔵」
個性あるジンやラムも製造している Photo by Matsuishuzo
新日本酒紀行「神蔵」
並行複発酵の英訳入り制服は販売も Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
蔵元杜氏の松井治右衛門さん(中央) Photo by Matsuishuzo
新日本酒紀行「神蔵」
人気の神蔵 濁り酒 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
純米のにごり酒 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
マシンには、限定品もあり Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
仕込み水も飲める Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
神蔵の定番ルリ!ボトルが印象的 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
神蔵の純米大吟醸の白 Photo by Matsuishuzo
新日本酒紀行「神蔵」
富士千歳のしぼりたて Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「神蔵」
シソのリキュール Photo by Yohko Yamamoto

*蔵見学は要予約、2700円で試飲付き。
松井酒造 蔵見学

日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子

週刊ダイヤモンド2024年2月24日号より転載