![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/3/5/650/img_35676727bcc499589c488129a078cb44219937.jpg)
新日本酒紀行 地域を醸すもの「富久錦」FUKUNISHIKI
『酒は土地の風土と思いが造る!
播磨の地産米純米酒蔵』
兵庫県加西市
全国に先駆け1987年に純米酒宣言を行い、92年に全量純米化した富久錦。播州平野の田園地帯で、1839年に創業した。
6代目の稲岡輝彦さんは、フランスのブドウ畑に囲まれたワイナリーを見て、地産米で醸す純米酒蔵へと方針を大転換。最盛期の1割以下に生産量を激減させた。
2013年に8代目を継いだ息子の敬之さんは「売れる酒より、飲みたい酒を造りたい」と、古式醸造の生酛造りに注力。
当初は重く渋い味だったが、醸造方法を試行錯誤し、軽やかで切れの良い酸味、滋味深さも併せ持つ味わいに。今や全体の4割が生酛造りだ。
技術屋肌で凝り性の敬之さんは、麹造りでは防水透湿布など新素材を用い、醸造機器は独自の改良を加えて使う。
また、8時間労働週休2日制を徹底するなど、就労条件も進歩的だ。その一方で、大正時代の100年物の木桶を再生し、木桶仕込みの酒も醸す。「木桶の醪(もろみ)発酵は、土地の環境に敏感。気候に左右され手ごわいが技術が上がる」。
努力は結果に表れ、23年に英国で開催された日本酒コンクールでは、山田錦で醸したスパークリングや生酛の酒など出品した三つ全てが賞を受賞。
「加西市の山田錦の地位向上につながる」と喜ぶ。
契約農家には酒米に難しい注文を付ける分、支払いも増やす。就農する若者が増え、農家は向上心が高い若手ぞろいになり、農家発の企画酒もある。
「酒は土地の風土と思いが造る」が持論。播磨の米と水と人で、播磨の地酒を追求する。
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/6/7/500/img_679633b989742654c55d15c3a479a961218864.jpg)
酒蔵外観。味のある木造建築。 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/500/img_6ce539f8528d9e9c26e37c11e80c5ecc213107.jpg)
原料処理室 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/a/e/500/img_ae8fb7373fbc5c7f0362341559b19fe4229236.jpg)
甑は小型の2種を使い分ける Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/4/f/650/img_4ff11dffab969b648cfb6a9a84945dac236286.jpg)
特注の短い放冷機 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/3/d/500/img_3dbe56fceca0f38424ce11b56dc6c2e9238576.jpg)
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/500/img_5c3205b2120c168aa25adf667250b4ef235672.jpg)
大正時代の3階建て木造建築 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/9/3/500/img_93279a533dd9b2ae269aba18b002b340220493.jpg)
大正時代の木桶8本を2本に再生 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/0/9/650/img_09ed6d853bfb73f42bf2737b552033fe211676.jpg)
麹室 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/7/a/650/img_7a951f553541b91010d3a5d8b6d54306227600.jpg)
広く、使いやすい麹室 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/2/6/650/img_265fb4722b8109ae2c4151eabb2e3efb172427.jpg)
ロードセルを新調し、水分管理の精度が向上。Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/9/6/650/img_96f8d51c0b180eb68dff27cb761ac07e186767.jpg)
整理整頓され、清らかに整う麹室。 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/d/0/650/img_d026e84c4fccb23ede9c15dd2c91a1e5231634.jpg)
木造の味のある蔵内 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/e/7/500/img_e760efb605457b4685aa07a799d9d34a176863.jpg)
酒母室 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/4/b/500/img_4b518f6d3890227bece1fc3e2d867696234931.jpg)
発酵中の酒母 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/5/0/650/img_50380786a464c2b1fc062ddee33a8d3a265937.jpg)
仕込み蔵の床は、安全できれいな仕事しやすいフローリング Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/4/8/500/img_486cdbec946abd198605b89e72de2681218853.jpg)
搾り機は冷蔵庫内に設置。汚れがわかりやすい、清潔な白色! Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/a/e/500/img_ae1fa1c8f127f3fb32168669e9aeacf1191891.jpg)
特注の垂れつぼで酸化を抑制しています。 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/6/6/650/img_66aa5cde28addcecdb033ec40c7f5598247238.jpg)
直営店「ふく蔵」には、お酒が全種類勢揃い。試飲もできます。ランチもおいしい! Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/d/c/500/img_dc0050b3cfdd8c3e8021773233799d13177404.jpg)
名古屋さんの「日本酒の装い」についてはこちらに説明があります。
手がけられたお米もお豆も超美味で、なにもかもセンス抜群!
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/1/b/650/img_1bb2649108ea6a7bdb39d86490153d1e217190.jpg)
福久錦さんは、旅行会社のとの企画酒も醸造しています。その旅行会社は京都のみたて庄司英生さん(左)が代表を務めるインバウンド向けの旅行会社。そして、右が庄司さんのお酒の酒米、山田錦を手がけられた栽培農家・元源代表の藤本圭一朗さんです。庄司さんいわく、「一つの田んぼで1人の農家が育てた1品種の米で醸せば、シングルオリジンが名乗れる!」と閃いたのです。富久錦の稲岡さんに相談し、熟成して味がのるよう、生酛造りの純米大吟醸を商品化。銘柄は新月を意味する「朔」。山田錦の田んぼの土で酒器も作成。
「朔」については→ http://www.yohkoyama.com/archives/5979藤本さんは黒大豆枝豆でも超有名人!超明るい面白い人です。Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/0/2/500/img_025636617729b984bf5458754bba0c13231624.jpg)
8代目の稲岡敬之さん! 全て加西市産の米と水だけの純米酒を醸しています。
次から次へと意欲作を発表。希少な酒米にも挑戦。 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/a/c/500/img_ac7addad0203e8bd24a7742a19337214220113.jpg)
生酛造り純米大吟醸 神代の舞 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/8/8/500/img_88bea626bb3c69195eabd37d29bf58a3103823.jpg)
山田錦 特別純米 Photo by Y.Y.
![新日本酒紀行「富久錦」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/f/6/500/img_f6ef46b40f95c657c5b300def715a7f1218457.jpg)
「純青」山田錦。どれもこれも美酒 Photo by Y.Y.
日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2024年3月23日号より転載