![新日本酒紀行「熟露枯」](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/650/img_da265ccc175e9343a17a319a13e27784257664.jpg)
新日本酒紀行 地域を醸すもの「熟露枯」
栃木県那須烏山市
『戦車工場跡の地下洞窟で熟成させた、
エレガントな大吟醸』
総延長600mにも及ぶ洞窟は、戦車製造工場として建造された。坑道3本と連絡する5本の横坑から成り、戦車が自走できるように高さ、幅共に3.5mのかまぼこ形だ。
全て人力で掘られ、岩肌にごつごつした掘削跡が残る壮大な建造物だが、完成予定日が1945年8月15日で、一度も使われないまま終戦を迎えた。「意匠・技術力を超越した迫力が感受される」と土木学会選奨の土木遺産と、那須烏山市の近代化遺産に認定される。
この洞窟で、99年から贅沢な大吟醸酒の熟成を試みたのが島崎酒造だ。
創業は1849年で、2代目の島崎熊吉さんが蔵を那須烏山に移し、大の相撲好きから銘柄を「東力士」と命名。
5代目の利雄さんは熟成酒に力を注ぎ、6代目の健一さんが引き継いで、家紋のうろこにちなんで古酒を「熟露枯(うろこ)」とした。
実は利雄さんは中学生のとき、学徒動員でこの洞窟を掘ったのだ。
洞窟内は一年を通じ10℃±5℃を保ち、太陽光は入らない。風が通る設計で計算され、傾斜がついて気持ちよい空気が流れる。湿度は高いがカビとは無縁。季節の温度変化を受け、瓶内で対流が生まれるなど熟成に最適な条件が揃う。そうして熟成を経た大吟醸酒は、滑らかでエレガントな味わいに変化。
洞窟は土日祝日に開放し、年間2万人が訪れる名所になり、併設のショップでは年代違いの試飲も楽しめる。「地域に残された財産を生かし、新しい味を創造していきたい」と健一さん。平和の語り部として、価値ある酒を追求する。
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市の近代化遺産の碑 Photo by Y.Y.
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洞窟の入り口 Photo by Y.Y.
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洞窟内部。ひんやりして気持ちいい空間。風も通る。 Photo by Y.Y.
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洞窟にはさまざまな酒が熟成されている。 Photo by Y.Y.
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洞窟内部 Photo by Y.Y.
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酒粕も熟成させている。 Photo by Y.Y.
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「山廃仕込純米酒熟露枯」 Photo by Y.Y.
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「山廃仕込純米酒熟露枯」 Photo by Y.Y.
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山田錦W酵母仕込の東力士 Photo by Y.Y.
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「しもつかれ酒」 Photo by Y.Y.
日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子
※週刊ダイヤモンド2024年3月16日号より転載
熟成酒のほかにもいろいろな商品があって楽しいですが、にごりの低アルコール酒「ニゴリ」がスイスイ飲めるおいしさ!あまりにおいしくてリピ買いしました(笑)。季節限定の春出荷。見つけたら試してほしいお酒のひとつです!
島崎酒造の「ニゴリ」ピンク色したゴリラのイラストラベルです。