新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・熟露枯 NO.335

新日本酒紀行「熟露枯」「どうくつ酒蔵」受付 Photo by Yohko Yamamoto

新日本酒紀行 地域を醸すもの「熟露枯」

栃木県那須烏山市

『戦車工場跡の地下洞窟で熟成させた、
エレガントな大吟醸』

総延長600mにも及ぶ洞窟は、戦車製造工場として建造された。坑道3本と連絡する5本の横坑から成り、戦車が自走できるように高さ、幅共に3.5mのかまぼこ形だ。

全て人力で掘られ、岩肌にごつごつした掘削跡が残る壮大な建造物だが、完成予定日が1945年8月15日で、一度も使われないまま終戦を迎えた。「意匠・技術力を超越した迫力が感受される」と土木学会選奨の土木遺産と、那須烏山市の近代化遺産に認定される。

この洞窟で、99年から贅沢な大吟醸酒の熟成を試みたのが島崎酒造だ。

創業は1849年で、2代目の島崎熊吉さんが蔵を那須烏山に移し、大の相撲好きから銘柄を「東力士」と命名。
5代目の利雄さんは熟成酒に力を注ぎ、6代目の健一さんが引き継いで、家紋のうろこにちなんで古酒を「熟露枯(うろこ)」とした。
実は利雄さんは中学生のとき、学徒動員でこの洞窟を掘ったのだ。

洞窟内は一年を通じ10℃±5℃を保ち、太陽光は入らない。風が通る設計で計算され、傾斜がついて気持ちよい空気が流れる。湿度は高いがカビとは無縁。季節の温度変化を受け、瓶内で対流が生まれるなど熟成に最適な条件が揃う。そうして熟成を経た大吟醸酒は、滑らかでエレガントな味わいに変化。

洞窟は土日祝日に開放し、年間2万人が訪れる名所になり、併設のショップでは年代違いの試飲も楽しめる。「地域に残された財産を生かし、新しい味を創造していきたい」と健一さん。平和の語り部として、価値ある酒を追求する。

新日本酒紀行「熟露枯」
↑「熟露枯 大吟醸飲み比べセット」
島崎酒造・栃木県那須烏山市中央1-11-18
●代表銘柄:東力士、熟露枯、極雫
●杜氏:関根達郎
●主要な米の品種:山田錦、五百万石、夢ささら
新日本酒紀行「熟露枯」
市の近代化遺産の碑 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」土木遺産の碑 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
洞窟の入り口 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
洞窟内部。ひんやりして気持ちいい空間。風も通る。 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
洞窟にはさまざまな酒が熟成されている。 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
洞窟内部 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
酒粕も熟成させている。 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
蔵元の島崎健一さん Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
新商品! Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
東力士のスタンダードシリーズ Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
「山廃仕込純米酒熟露枯」 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
「山廃仕込純米酒熟露枯」 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
山田錦W酵母仕込の東力士 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「熟露枯」
「しもつかれ酒」 Photo by Y.Y.

日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子

週刊ダイヤモンド2024年3月16日号より転載

https://www.diamond.co.jp/magazine/20243031624.html

熟成酒のほかにもいろいろな商品があって楽しいですが、にごりの低アルコール酒「ニゴリ」がスイスイ飲めるおいしさ!あまりにおいしくてリピ買いしました(笑)。季節限定の春出荷。見つけたら試してほしいお酒のひとつです!
島崎酒造の「ニゴリ」ピンク色したゴリラのイラストラベルです。