新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・若駒 NO.185

今年もあと二日となりました。年明けに飲むお酒は決まりましたか?今回はズバリ「金たまる」酒をご紹介します✨

↑若駒酒造の正門と蔵。先祖が発注した瓦は特注品で、修理費が高いのが難

山本洋子:酒食ジャーナリスト

ライフ・社会 新日本酒紀行

https://diamond.jp/articles/-/255597

週刊ダイヤモンド2020年11月21日号より転載

新日本酒紀行 地域を醸すもの

栃木県小山市「若駒」

『苦労の末の新銘柄は 米にこだわる

少量仕込みの槽搾り』

昔の蔵の写真。今とほとんど変わりません

(本文より)

栃木県小山市の若駒酒造の屋号は「太○」と書いて「かねたまる」と読みます。

意味はもちろん「金たまる」!

↑屋号が付いた昔の通いどっくり

 創業は1860年、祖先は商売上手といわれる近江商人。

 ですが、6代目の柏瀬幸裕さんが蔵へ戻った2009年は、金がたまるどころか、出ていく一方・・・。

「親孝行のつもりで、3年間だけ酒を造ろうと帰ってきました」。

当時の生産量はたったの100石。

そのうち7割は儲からない普通酒でした。

↑蔵は木造で天井が高く広い

酒造りを習得するために、父の東京農業大学での同期生の蔵、奈良県の油長酒造へ修業に行きました。

3年間働き、給料は実家に送り、生原酒の技術を学ぶ日々。

「そして戻って最初に造った酒がラッキーパンチな高評価!でも続かずに4年目から大改革です」と幸裕さんは言います。

 柏瀬家は昔、2km先にある駅までの地所を所有する地主でした。

瓦屋根が続く大きな蔵の一部は国の有形文化財になっています。

 なのですが、東日本大震災で壁が崩れてしまい、さらに豪雨被害に遭って、蔵の中央の屋根が落ちてしまいます。

今は残った蔵で、酒造りを続けています。

 

 幸裕さんの酒造りの特徴は、少量仕込みで、メインの酒の米はあえて磨かず、山田錦は使わないこと。

「誰も使っていない米はないですか?」が口癖。

搾り作業をする蔵元杜氏の柏瀬幸裕さん。みんなから「カッシー」と呼ばれています!

全量、槽で搾っています (上のPhoto3点撮影 Wakakomasyuzou)

 昨年の大嘗祭で選ばれた栃木の米、「とちぎの星」も初年度から採用し、今も木桶仕込みの酒に使用。独自のジューシー感がある酒は、居酒屋主催の鑑評会で最優秀賞を連続受賞し、ファンも多い!

↑新銘柄は昔の「若駒」の絵を基にしました。

↑幸裕さんが醸す酒。少量仕込みの楽しい企画が多いのも特徴 

 苦労続きの酒造りだが、自ら立ち上げた銘柄「若駒」は、今や250石まで増え、「金たまる」のも時間の問題!?

↑麹室の扉

↓「若駒 太〇 木桶仕込み しずくしぼり とちぎの星」

DATA●若駒酒造・栃木県小山市大字小薬169●代表銘柄:若駒 愛山90 しずく搾り、若駒 雄町90 無加圧採り、若駒 五百万石80 無加圧採り●杜氏:柏瀬幸裕●主要な米の品種:愛山、雄町、五百万石、夢ささら

 


週刊ダイヤモンド2020年11月21日号より転載

https://diamond.jp/articles/-/255597