新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・東鶴 NO.199

 

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東鶴酒造6代目で杜氏の野中保斉さん Photo by Yohko Yamamoto

週刊ダイヤモンド202136日号より

新日本酒紀行 地域を醸すもの
佐賀県多久市 「東鶴」

山本洋子:酒食ジャーナリスト  新日本酒紀行

『心機一転、設備一新!

 東鶴の新たな羽ばたき』

(本文)
山々に囲まれた佐賀県多久市の東鶴酒造。1989年から訳あって、酒造りを休業していた。

2002年に6代目の野中保斉さんが蔵に戻ったものの、酒の味が苦手で飲食店に勤務。ある日、唐津市の小松酒造の蔵元杜氏、小松大祐さんと出会い、酒造りの姿勢と酒のうまさに魅了される。

自ら酒を醸すと決め、国税庁の酒造講習会で学び、山口県の永山本家酒蔵場で一冬働き、2009年から父と酒造りを再開した。だが、長い休造期間もあって設備は老朽化、酒造経験も乏しく、1年目の酒は手厳しい評価を受ける。噂を聞いた県内の蔵元や酒販店がアドバイスを授け、酒質が少しずつ改善した。

そんな中、多久市の特産品開発プロジェクトに参加。多久市産米ゆめしずくで純米大吟醸酒を醸すと地元で売れ、「蔵の理想は、地元に愛される酒」と保斉さんは励まされた。

さあこれからというタイミングの、2019年8月28日。激甚災害に指定された集中豪雨が蔵を襲った。隣を流れる別府川が決壊し、大事な設備や蔵の心臓部である麹室が床上浸水してしまう。

「廃業も考えましたが、今やるしかないと、尻をたたかれました!」。

老朽化した槽搾り機は、空調設備が整った新型搾り機に変わり、麹室はさらなる水害を避けるため、物置きと化していた蔵の2階に移設。

「今は、設備が揃って夢のようです。一流の蔵で仕事をしている気分(笑)」

 

心機一転、設備一新の今年の酒。東鶴の新たな羽ばたきが始まった。

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↑『東鶴 純米酒』

東鶴酒造・佐賀県多久市東多久町大字別府3625-1 ●代表銘柄:東鶴 純米吟醸酒、東鶴 実のり 生〓つくり(〓は酉に元)、東鶴 芽吹き うすにごり 生 ●杜氏:野中保斉●主要な米の品種:山田錦、ゆめしずく、レイホウ

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【写真】蔵は築100年以上。蔵の前と隣が川

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蔵は築100年以上。蔵の前と隣が川 Photo by Y.Y.

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蔵は築100年以上。蔵の前と隣が川 Photo by Y.Y.

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蔵は築100年以上。蔵の前と隣が川 Photo by Y.Y.

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蔵は築100年以上。蔵の前と隣が川 Photo by Y.Y.

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【写真】浸水した麹室、新しい麹室

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昔の麹室の扉。川が氾濫し、ここまで浸水した Photo by Y.Y.

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新しい麹室は蔵の2階に設置 Photo by Y.Y.