新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・天花 NO.201

 

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↑蔵人5人衆 Photo:Dainagawa


週刊ダイヤモンド3/20号 #儲かる農業

新日本酒紀行 地域を醸すもの
秋田県横手市大森町「天花」

山本洋子:日本酒&食ジャーナリスト 新日本酒紀行

『町の誇りとなる酒蔵へ!

 生まれ変わって5冠に輝く』

(本文より)

 日本酒はピーク時の1/4まで出荷量が落ち、休業・廃業、家族経営を外部人材で救済するケースも増えている。秋田県横手市大森町で1914年に創業した大納川は後者。新社長は田中文悟さんで、13もの酒蔵を立て直した酒蔵再生人だ。地元銀行から腕を見込まれての依頼に、「町唯一の蔵を絶やしてはならない」と引き受けた。モットーは「誰も辞めさせない」そして「町の誇りとなる酒蔵」だ。

 2019年に新体制で始動。杜氏は、四半世紀この蔵一筋の佐藤好直さん。蔵人は文悟さんを含めた5人で、社長自ら米洗いに酒質設計、営業と早朝から駆け回った。

 安酒一辺倒の酒造りから純米酒造りにスイッチ。だが、建物も設備も老朽化し困難を極めた。清掃を徹底し、最低限の設備を導入し、少量仕込みへと切り替えた。洗米は500kg単位だったのを10kg単位に。搾った酒は3日以内に瓶詰めし、瓶ごと湯煎で殺菌。貯蔵は冷蔵庫と、全てを大吟醸級の造りに変えた。

 成果は酒造り2年目の20年に表れた。全国新酒鑑評会で入賞、老舗蔵がそろう秋田県清酒品評会で知事賞首席、強豪が多い東北清酒鑑評会で優等賞など5冠に輝いた。無名蔵の好成績は同業者、町民、誰もが驚き、苦節25年の佐藤杜氏は知らせに涙した。

「酒造りに重要なのは環境改善」と文悟さん。「清潔で丁寧な造り、社内の明るい雰囲気が絶対条件。酒が僕らを見てるんです」。

 わずか66石から始まった酒造りは、3年目に450石まで増石。酒が答えを出した。

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定番の1本「天花 純米吟醸 無濾過原酒」

大納川・秋田県横手市大森町字大森169●代表銘柄:大納川 純米大吟醸、天花 純米、山内杜氏 純米吟醸●杜氏:佐藤好直●主要な米の品種:秋田酒こまち、めんこいな、亀の尾

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契約栽培田で大納川社長の田中文悟さんと杜氏の佐藤好直さん Photo:Dainagawa

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蔵外観 Photo:Dainagawa

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洗米は10kg単位で行う。 Photo:Dainagawa

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蒸し米に麹菌を振る佐藤好直杜氏 Photo:Dainagawa

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火入れは瓶ごと和窯で湯煎 Photo:Dainagawa

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利き酒する佐藤好直杜氏 Photo:Dainagawa

【写真】大納川 純米大吟醸、天花 亀の尾 純米大吟醸、山内杜氏