新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・陣屋 222

新日本酒紀行「陣屋」・福島県白河市東釜子

山本洋子:酒食ジャーナリスト

新日本酒紀行

img_b09696fd729139b6cb7520188dad357a345801.jpg

左から、有賀裕二郎さん、父の義裕さん、弟の裕輝さん Photo:Arigajouzo

『蔵の歴史を酒に込め、

未来につながる酒造りへ』

(本文より)

 韓流ブームになる30年も前から、マッコリに注目した蔵元がいた。みちのくの玄関口、福島県白河市の有賀醸造の有賀義裕さんだ。

 酒造りの技術を生かし、酒質を設計。非加熱でフレッシュな生酒、爽やかな発泡性、きれのいい酸味、低アルコールで辛口、もちろん添加物は一切不使用。キリッとドライな風味で、韓国料理や焼肉の店で人気が沸騰し、蔵の主流商品になった。

 近年、そのマッコリに次いで、蔵の柱になったのが「陣屋」だ。

 蔵の立つ釜子地域は、1741年から130年の間、越後高田藩15万石の飛び領だった。
当時、庄屋の有賀家の裏に大きな陣屋が建ち、酒造りを命じられ、御用蔵になった。

  その後、別の銘柄も生まれたが、土地の歴史を背負う「陣屋」に光を当てたのが、義裕さんの次男で杜氏を務める裕二郎さんだ。

 裕二郎さんは2011年まで、東北大学の研究員で生命科学や免疫系の遺伝子研究に従事。
だが、東日本大震災で被災した地元の助けになる仕事をしたいと、蔵へUターン。

  福島県清酒アカデミーで基礎を学び、蔵で試験醸造を繰り返してデータを収集。元研究員らしい科学的なアプローチで酒造りを行う。

 兄で専務の一裕さんは薬剤師、弟の裕輝さんは東京農業大学で醸造を学んだ蔵人という理系兄弟で蔵を継ぐ。

 24年には創業250周年を迎える。「酒蔵百年の大計を立てます」と裕二郎さん。

蔵から見渡せる田んぼを全て、農家と協力し環境保全型の酒米田にと願う。

 土地を潤し未来につながる蔵の形を模索する。

不明.gif

↑『陣屋 特別純米』

有賀醸造・福島県白河市東釜子本町96
●代表銘柄:虎マッコリ、陣屋 純米、生粋左馬 純米大吟醸、やまぶき、やまゆり
●杜氏:有賀裕二郎●主要な米の品種:夢の香、山田錦陣屋 特別純米

 

次のページ

【写真】土地の歴史を背負う「陣屋」

img_a35a390c97c5a7ee2d865246281ea5cb315444.jpg

釜子陣屋跡。戊辰戦争で焼失した Photo by Yohko Yamamoto

img_40bf8252d6610de062fe40993c097938242435.jpg

蔵の周りに広がる田んぼ Photo by Y.Y.

img_036c085983e28193a7f90b2180a4083a124141.jpg

小さく仕込める酒造り体験蔵も Photo by Y.Y.

img_af28dd1922f8d623d77f6129dc454b7f148758.jpg

麹室 Photo by Y.Y.

img_ea5b0564adf867e3745af1be6d6a08ef193486.jpg

麹室 Photo by Y.Y.