新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・赤武237

週刊ダイヤモンド 2021年 12/11号
新日本酒紀行 地域を醸すもの赤武」AKABU

岩手県盛岡市

山本洋子:酒食ジャーナリスト新日本酒紀行

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↑6代目で杜氏の古舘龍之介さん Photo by Yohko Yamamoto

復活蔵で醸す美酒!
赤い兜に込めた若い情熱

(本文)
 赤い兜がアイコンの酒「赤武」は、赤武酒造6代目、古舘龍之介さんが杜氏となり酒質設計を行う。

 白い果実や柑橘を思わせる爽やかさがあり、様々な品評会で高評価を得る。

 岩手県盛岡市で酒造りを行うが、2011年3月まで蔵は大槌町にあった。東日本大震災で高さ10メートル超の津波が町を襲い、沿岸部が壊滅状態になり、蔵は全壊。町は人口の8%を失った。

 龍之介さんの父、秀峰さんは廃業を決めたが多くの応援を受け、13年に新工場を竣工。復活蔵と名付けた。

 震災時、龍之介さんは東京農業大学の学生で、「辞めて蔵を手伝う」と言ったが父は制止。14年に卒業後、醸造試験場で研修をし、試験醸造した酒が良い出来で、父は息子に酒造りを任せると決心。

 杜氏を任された龍之介さんは無我夢中で酒造りに没頭。暗夜のともしびとなったのは岩手県工業技術センターだ。蔵の直近にあり、日に何度も往復して指導を受けた。

 目指すのは若い人の入り口となる酒で、フレッシュできれいな甘味を追求。ラベルは漢字の銘柄が多い中、赤い兜をアイコン化して個性を表現した。また、長期で働ける快適な労働環境を整え、繁忙期も週休2日制で、作業は必ず2人一組で行い夜間作業はしない。蔵内は整理整頓が徹底されて清潔。若手中心で女性も多く明るく活気がある。

「龍之介は本当に酒が好きなんです」と秀峰さんは目を細める。

「まだまだもっと酒質を上げます」と龍之介さん。

 震災から10年、情熱を燃やす若武者たちが美酒を進化させる。

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赤武 純米吟醸

赤武酒造・岩手県盛岡市北飯岡1-8-60 ●代表銘柄:赤武 極上ノ斬 純米大吟醸、赤武 純米酒、赤武F ●杜氏:古舘龍之介 ●主要な米の品種:吟ぎんが、結の香

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【写真】2013年に完成した酒蔵

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2013年に完成した酒蔵。隣は吟ぎんがの田んぼ Photo:Akabusyuzou

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2013年に完成した酒蔵。隣は吟ぎんがの田んぼ Photo by Y.Y.

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若手が結集したチーム赤武 Photo:Akabusyuzou

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【写真】洗米・浸漬、蒸し米、酒母、もろみの櫂入れ

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洗米・浸漬作業 Photo:Akabusyuzou

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蒸し米を運ぶ Photo:Akabusyuzou

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蒸し米の放冷 Photo:Akabusyuzou