新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・磐城壽239

道の駅なみえ道の駅なみえ Photo by Yohko Yamamoto

「ただいま」は
10年ぶりに故郷浪江で醸す海の男酒

(本文)

日本一海に近い蔵といわれた福島県の沿岸部浜通り、浪江町の鈴木酒造店。蔵元杜氏の鈴木大介さんと弟の荘司さんが醸す力強い味は、地元漁師が愛飲する「海の男酒」だった。

東日本大震災の津波で蔵は流失。原子力発電所事故で避難指示が発令され、故郷の土が踏めなくなった。

 縁あって山形県長井市で酒造りを再開できたが、「いつか必ず故郷で酒造りを」と願い、苦節10年が過ぎた。

2021年3月20日、とうとう夢がかなう。

新しい醸造所、浪江蔵は「道の駅なみえ」の中に完成。

浪江町の人口は、震災前の2万2000人から1700人に減ったが、日中人口はそれ以上に戻った。

道の駅は復興のシンボルであり、水素発電を行い、生活の利便を図り雇用を促進する、スマートコミュニティーの実現に向けた拠点だ。新蔵は公設民営で、大介さんはゼロから設計に関わった。コンパクト故に長井の蔵は継続し、兄弟が週の半分ずつ交代で二つの蔵を行き来する。

浪江蔵で使う米は町内の農家、半谷啓徳さんが育てたコシヒカリだ。

「米も、精米から瓶詰めまで、全て浪江町で」と大介さん。

最新の扁平精米機を導入し、最新鋭の酒造設備は少人数で四季を通じて醸造が可能。甘酒や発泡酒、地元産のハーブや果実を使ったリキュールなど新製品も続々登場する。

明るい店内の窓からは醸造の様子を見学でき、請戸漁港で上がった魚をあてに、地元相馬焼の杯で酒を楽しめる。

大介さんは10年ぶりに故郷で醸した酒に「ただいま」と名付けた。

磐城壽 ただいま磐城壽 ただいま
鈴木酒造店浪江蔵 ・福島県双葉郡浪江町幾世橋知命寺40 ●代表銘柄:磐城壽 おかえり、磐城壽 純米吟醸酒、磐城壽 純米酒、土耕ん醸、甦る、親父の小言 ●杜氏:鈴木大介 ●主要な米の品種:コシヒカリ
道の駅なみえ
道の駅なみえ Photo by Y.Y.
道の駅なみえ
道の駅なみえ Photo by Y.Y.
鈴木大介さん
鈴木大介さん Photo by Y.Y.
扁平精米の米
扁平精米の米 Photo by Y.Y.
自主基準検査
自主基準検査 Photo by Y.Y. 拡大画像表示
甑は特注の最小サイズ
甑は特注の最小サイズ Photo by Y.Y.
清潔な麹室
清潔な麹室 Photo by Y.Y.
吟醸用製麹機
吟醸用製麹機 Photo by Y.Y.
甘酒も仕込む
甘酒も仕込む Photo by Y.Y.
磐城壽カラーの青いタンク
磐城壽カラーの青いタンク Photo by Y.Y.
磐城壽カラーの青いタンク
磐城壽カラーの青いタンク Photo by Y.Y.
もろみ
もろみ Photo by Y.Y.
最新型搾り機
最新型搾り機 Photo by Y.Y.
店内へのパスボックス
店内へのパスボックス Photo by Y.Y.
店内から仕込みが見える
店内から仕込みが見える Photo by Y.Y.
店内から仕込みが見える
店内から仕込みが見える Photo by Y.Y.
店内から仕込みが見える
「ただいま」がズラリと並んだ店内 Photo by Y.Y.
コイン式自動試飲機
コイン式自動試飲機 Photo by Y.Y.
ももクロワンカップ
ももクロワンカップ Photo by Y.Y.
純米吟醸
純米吟醸 Photo by Y.Y.
標葉にごり
標葉(しねは)にごり Photo by Y.Y.
黄金蜜酒
とろりと甘い極上の「黄金蜜酒」 Photo by Y.Y.
ハマラッシー
ハマラッシー Photo by Y.Y.

(酒食ジャーナリスト 山本洋子)

●道の駅なみえ https://michinoeki-namie.jp

週刊ダイヤモンド2021年12月25日~1月1日号より転載