新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・旭鳳 NO.294

新日本酒紀行「旭鳳」
旭鳳酒造は創業1865年の老舗。
7代目の濱村洋平さん。Photo by Yohko Yamamoto

新日本酒紀行 地域を醸すもの「旭鳳

広島県広島市安佐北区可部

地の米と地の酵母で、

  父にささげる可部の地酒に挑む

本文

 旭鳳酒造7代目を濱村洋平さんが継いだのは2015年、弱冠26歳の夏だった。

 初めて酒を手掛けたのはその秋だ。「父親の死に顔を見て、ささげる酒を造ろう」と、64歳で急逝した父泰司さんへの敬意を込め、杜氏に教わりながら醸した。

米は広島の酒米八反錦、酵母はKBを選択。KBは蔵のある地名「可部(かべ)」から命名された、泰司さんが開発に関わった酵母である。
完成した酒は、父と自分の名から1字ずつ取り「泰平」と名付けた。


洋平さんは以前から、杜氏が代わると、酒の味が変わるのが気になっていた。
16年に杜氏が退社したのを機に、自ら杜氏となり、旭鳳の味をつくると決心。

 不安が襲う背中をグッと押したのが、父の酒造の友人たちだ。
中でも原本店の原純さんは「おまえが造れ。大丈夫、酒にはなるけ!」と励まし、指導してくれた。

19年、無我夢中で醸した純米大吟醸が、フランスで開催された日本酒鑑評会で金賞を受賞。翌年も連続受賞し、21年には「泰平」が金賞に輝く。

使う米は全て県産だが、純米酒の「大林千年」は自ら米栽培に参加。
田んぼのある大林地区は高齢化と過疎化が進む中山間地域で、14年の集中豪雨で甚大な被害に遭った。
「千年先も豊かな集落を目指そう」と他地域から若者が集まって被災田を復田。4年目に酒が仕込める量が取れ、醸した酒は町内で完売した。

重責を果たす中、品質向上に励み、KB酵母のもろみから新たな酵母を分離培養し、この地でしかできない酒造りに挑む。

新日本酒紀行「旭鳳」
「旭鳳 純米吟醸 泰平 TAIHEI」
旭鳳酒造・広島県広島市安佐北区可部3-8-16
●代表銘柄:旭鳳 純米大吟醸八反錦、旭鳳 純米 中生新千本、旭鳳 大林千年
●杜氏:濱村洋平
●主要な米の品種:八反錦、千本錦、雄町、中生新千本
新日本酒紀行「旭鳳」
蔵の背後は高松山 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭鳳」
濱村洋平さんと母の郁子さん Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭鳳」
原料処理室 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭鳳」
麹室 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭鳳」
完成した麹 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭鳳」
新日本酒紀行「旭鳳」
発酵中の酒母 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭鳳」
酒母 Photo by Y.Y.