新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・加茂錦 NO.295

新日本酒紀行「加茂錦」
創業地は加茂市、現醸造所は新潟市秋葉区に Photo by Aki Kawana

週刊ダイヤモンド2023年 4/1号でご紹介したのは大人気の酒蔵加茂錦酒造 さんです🌾

美しさが織りなす品位を探究!
目指すは「好みの壁を越える酒」

(本文)

 酒造り3年目で、難関の鑑評会で最高位を受賞した加茂錦酒造の田中悠一さん。
きれいなうま味が広がる斬新な酒を次々と世に出し、「新潟に彗星現る」と瞬く間に人気銘柄に駆け上がった。

 酒蔵は家業ではなく、2009年に悠一さんの父が遠戚の酒蔵の再建を引き受けてのスタートだ。
当時、悠一さんは新潟大学工学部の学生で、下戸の父が勉強のため集めた酒を、毎晩、千本ノックのようにきき酒した。

   全国の銘酒を知り理解を深めるうち、徐々に酒造りへの興味が湧く。両親は強く反対したが、大学3年で休学し酒造りの道へ。文献を読みネットで検索、先輩の蔵元や酒販店の指導も受け、多種多様な米と酵母で試行錯誤を重ねた。

 理系脳を発揮し、醸造道具も自作。排水の早さを重要視した浸漬装置は、数人掛かりの作業を1人で実現可能に。製麹時の厚みを可視化できる仕掛けも考案し、温度調整は遠隔で管理。品質向上に加え、労働時間の改善につながった。

   デビュー作の「荷札酒(にふだざけ)」は、ラベルに酒米や精米歩合、酒造年度、タンク番号まで区分記載し、造り手の設計意図を伝える。
アルコール13度原酒の酒は「黄水仙」と名付け、味を日本の伝統色で表し、飲み手に興味を湧かせた。プレミアムクラスの「BRILLIANCE(ブリリアンス)」では、希少な酒米をより磨き、エイジングを加えて品位を追求。美しく重層感のある味は、食のペアリングを求める飲食店主からも絶賛される。

   探究心の塊、悠一さんが目指すのは「好みの壁を越えられる酒」だ。

↑「荷札酒 黄水仙 純米大吟醸」
加茂錦酒造・新潟県加茂市仲町3-3●
代表銘柄:荷札酒 生詰原酒 純米大吟醸、荷札酒 月白 純米大吟醸、BRILLIANCE 播州愛山
●杜氏:田中悠一
●主要な米の品種:山田錦、雄町、五百万石
新日本酒紀行「加茂錦」
米は二重蒸気槽で蒸す Photo by Junichi Takahashi
新日本酒紀行「加茂錦」
種麹をふる田中悠一さん Photo by Junichi Takahashi
新日本酒紀行「加茂錦」
麹造り Photo by Junichi Takahashi
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製麹装置は透過光で麹の均一さを判別する、「バリバリ乾かす」という出麹、酒母造り
新日本酒紀行「加茂錦」
製麹装置は透過光で麹の均一さを判別する Photo by Junichi Takahashi
新日本酒紀行「加茂錦」
「バリバリ乾かす」という出麹 Photo by Junichi Takahashi
新日本酒紀行「加茂錦」
酒母造り Photo by Junichi Takahashi
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1枚ずつはんこを押す荷札ラベル、キャップのロゴデザインは仕込み水の源、名峰粟ヶ岳から流れる加茂川
新日本酒紀行「加茂錦」
1枚ずつはんこを押す荷札ラベル Photo by Aki Kawana
新日本酒紀行「加茂錦」
1枚ずつはんこを押す荷札ラベル Photo by Aki Kawana
新日本酒紀行「加茂錦」
キャップのロゴデザインは仕込み水の源、名峰粟ヶ岳から流れる加茂川 
Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「加茂錦」
荷札酒 出羽燦々 Photo by kamonishikisyuzou
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荷札酒 吉川山田錦 Photo by kamonishikisyuzou
新日本酒紀行「加茂錦」
BRILLIANCE 赤磐雄町 Photo by kamonishikisyuzou
新日本酒紀行「加茂錦」
BRILLIANCE 播州愛山 Photo by kamonishikisyuzou

日本酒と食のジャーナリスト 山本洋子

週刊ダイヤモンド2023年4月1日号より転載