新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・古伊万里 前 NO.186

新日本酒紀行「古伊万里 前」

佐賀県伊万里市

蔵は伊万里港へ続く有田街道沿い。売店も併設

蔵は伊万里港へ続く有田街道沿い。売店も併設 Photo by Yohko Yamamoto

地元の農家の酒米で醸す!
世界を目指した酒造り

肥前佐賀藩の藩祖、鍋島直茂の朝鮮出兵によって朝鮮から陶工が佐賀に渡り、日本初の磁器が誕生した。その磁器、有田焼は交易品として、輸出港の名を取り伊万里焼とも呼ばれ、欧州などで珍重された。

1909年、呉服店を営んでいた前田家が酒蔵を創業し、前田酒造と名乗っていたが、3代目の前田健三さんが古伊万里酒造に改名。主に普通酒を醸し、焼き物の町の地酒として愛飲された。だが、健三さんは2011年に急逝し、長女の前田くみ子さんが4代目を継ぎ、夫の悟さんと共に酒造りを開始。

当時、佐賀県には「鍋島」や「東一」など、すでに国内外で有名な酒を醸す蔵があり、「古伊万里も、世界に向けてお酒を出したい!」と強く思ったという。

高品質の酒造りに舵を切り、前田の前と前向きの気持ちを込めて「前」と名付けて再出発。

微生物の発酵を邪魔しないよう、きれいな環境を目指して清掃を徹底。あえて汚れが目立つように床を明るい色に塗り替え、仕込み蔵は照明の数を増やして清潔に改装した。

使う米の9割は県産米で、地元の伊万里農協の山田錦や、炭山地区の棚田保全につながる棚田米のさがの華でも醸す。「地元農家と一緒の酒造りです」とくみ子さん。

英国やフランスで開催された日本酒鑑評会では連続で入賞を果たし、11月に発表された福岡国税局の鑑評会では純米吟醸が金賞を受賞。

10年前までは全く地元を出なかった酒だが、今や製造量の1割は海外へ輸出され、世界へ向かう。

古伊万里 前 純米吟醸

古伊万里 前 純米吟醸
●古伊万里酒造・佐賀県伊万里市二里町中里甲3288-1●代表銘柄:古伊万里 前 純米大吟醸、古伊万里 前 純米酒、すみやま純米吟醸●杜氏:忽那信太郎●主要な米の品種:山田錦、さがの華、雄町、雄山錦

蔵は伊万里港へ続く有田街道沿い。売店も併設

蔵は伊万里港へ続く有田街道沿い。売店も併設

4代目の前田くみ子さんと、夫の悟さん

4代目の前田くみ子さんと、夫の悟さん

釜場

釜場

佐賀県産山田錦の麹

佐賀県産山田錦の麹

佐賀県産山田錦の麹

佐賀県産山田錦の麹

酒母タンク

酒母タンク

搾り機は「隅から隅まで、食器と同様に洗う」と悟さん

搾り機は「隅から隅まで、食器と同様に洗う」と悟さん

仕込み蔵

仕込み蔵

有田焼の容器に純米酒を詰めた「NOMANNE(ノマンネ)」

有田焼の容器に純米酒を詰めた「NOMANNE(ノマンネ)」

ラベルも好評

ラベルも好評

地元の山田錦

地元の山田錦

炭山地区の棚田米の酒「すみやま」

炭山地区の棚田米の酒「すみやま」 炭山地区の棚田米の酒「すみやま」

炭山地区の棚田米の酒「すみやま」

定番の純米酒

定番の純米酒

酒肴は郷土のご豆腐、生姜の粕漬け

酒肴は郷土のご豆腐、生姜の粕漬け

週刊ダイヤモンド2020年11月28日号より転載