新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・奈良萬 NO.189

新日本酒紀行「奈良萬」

福島県喜多方市

『地元縛りの
高品質な純米酒で大成功!』

6代目の東海林伸夫さん

↑6代目の東海林伸夫さん Photo:YohkoYamamoto

 奈良と会津の結び付きは平安時代にさかのぼる。空海や最澄と同時代に活躍した高僧、徳一が奈良から会津に移住し、多くの寺院を建立して敬われた。その縁あってか会津には奈良屋という屋号が多い。喜多方市の夢心酒造もその一つだ。

 土建業から転身し、1877年に酒造業を創業。順調に業績を上げ、1980年代は普通酒の製造1万1000石を誇った。

「当時はほぼ市内消費です。約4万人の喜多方市ですから大酒飲みが多かった(笑)」と蔵元の東海林伸夫さん。だが売れ行きに陰りが出て、危機感から98年に新ブランドを開発した。

 高品質の純米酒と純米吟醸酒に特化し、屋号と創業者の萬次郎から奈良萬と命名。米は地元産の五百万石で、酵母は福島県が開発したうつくしま夢酵母のみと潔く決めた。根拠はその組み合わせで、全国新酒鑑評会で3年連続金賞を受賞したことだ。

 当時の越後杜氏いわく「俺は五百万石で良い酒を造れるから山田錦はいらねえ」。だが、そう決めたものの設備は普通酒1万石用で吟醸酒には不向き。そこで酒の指導で名高い県営の福島県ハイテクプラザに相談し、指導を仰ぎ試行錯誤して完成させた。

 地元縛りの酒は特徴が明快で、県外の地酒専門店で火が付き、20年間で600石に増えた。対して普通酒は400石と順調に(?)下がり、屋台骨の転換成功。

 奈良萬は特に純米酒がうまいと評価が高いが、実は純米吟醸酒を名乗れる品質。

「他と比べたら明らかにうちのがうまい!」と、作戦勝ちの伸夫さんは満面の笑み。

奈良萬 純米酒

奈良萬 純米酒
夢心酒造・福島県喜多方市字北町2932●代表銘柄:奈良萬 純米大吟醸、奈良萬 純米吟醸●杜氏:石川達明●主要な米の品種:五百万石

会津の五百万石の田んぼ

会津の五百万石の田んぼ Photo:Yumegokoroshuzo

洗米した米を、吸水のため浸漬タンクに投入

洗米した米を、吸水のため浸漬タンクに投入 Photo:Yumegokoroshuzo

連続式蒸米機と放冷機Photo:Y.Y.,Yumegokoroshuzo

連続式蒸米機と放冷機 Photo:Yumegokoroshuzo

連続式蒸米機と放冷機

連続式蒸米機と放冷機 Photo:Y.Y

酒母室

酒母室 Photo:Y.Y

2階にある発酵室。仕込みタンクの上部が見える

2階にある発酵室。仕込みタンクの上部が見える Photo:Y.Y

2階にある発酵室。仕込みタンクの上部が見える

2階にある発酵室。仕込みタンクの上部が見える Photo:Y.Y

2階にある発酵室。仕込みタンクの上部が見える

2階にある発酵室。仕込みタンクの上部が見える Photo:Y.Y

仕込みタンクの制御盤

仕込みタンクの制御盤 Photo:Yumegokoroshuzo

6トン仕込み用の大型タンク。自動攪拌用の羽根を内蔵

6トン仕込み用の大型タンク。自動攪拌用の羽根を内蔵 Photo:Y.Y

タンク内で発酵中のもろみ

タンク内で発酵中のもろみ Photo:Y.Y

搾りの際の酒粕を剝がす作業。奥が、杜氏の石川達明さん

搾りの際の酒粕を剝がす作業。奥が、杜氏の石川達明さん Photo:Yumegokoroshuzo

自動瓶詰め火入れライン

自動瓶詰め火入れライン Photo:Yumegokoroshuzo

自動瓶詰め火入れライン

自動瓶詰め火入れライン Photo:Yumegokoroshuzo

(酒食ジャーナリスト 山本洋子)

週刊ダイヤモンド2020年12月19日号より転載

https://www.diamond.co.jp/magazine/20243121920.html