ゼロから酒蔵を立ち上げた3人。左から取締役の田下裕也さん、社長の日下智さん、杜氏の山本克明さん Photo by Yohko Yamamoto
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新日本酒紀行 地域を醸すもの「光栄菊」
佐賀県小城市三日月町
『異業種の2人が無縁の地で悪戦苦闘!
ゼロから始めた酒蔵造り』
東京のテレビ局で経済や農業に関する番組を制作していた日下智さんは、減反や農家の高齢化などに疑問を持ち「米の6次産業化である酒造りに、解決の可能性がある」と気付く。
一方、同僚の田下裕也さんは、日本酒の番組を制作するうちに、酒造りへの思いを募らせた。
意気投合した2人は、家族の反対を押し切って酒造の道へと突き進む。
日下さんは長野県の酒蔵で働き、田下さんは妻の実家がある佐賀県の休造蔵と交渉するも難航。
そんな中、2人は愛知県の「菊鷹」という酒に出合ってほれ込み、杜氏の山本克明さんに、新蔵での酒造りを依頼し快諾を得る。
その後、佐賀県小城市の旧酒蔵を米国へ移築する計画が頓挫したとの情報をキャッチし、所有者と交渉。譲渡OKとなるが、酒造免許が返上済みで無い。
全国の休造蔵へ電話し、なんとか免許を入手する。だが、県をまたぐ免許の移動はなかなか進まず、交渉途中から酒蔵の工事を見切り発車した。
2019年8月27日、ついに免許付与が決定したその日、集中豪雨による洪水が蔵を襲った。新設の麹室が浸水し、急ぎ建て直したが、試験醸造の時間が取れず、ぶっつけ本番で酒造りをスタート。
「麹の声が聞こえたんです。濃く造れって」と山本さん。
麹に導かれて造った酒は見事な味で即完売。その後も品切れが続き、今期は生産量を倍増。
スター酒造に駆け上がった。佐賀の地に呼ばれるように集まった3人。根性と工夫で困難を乗り越えた新しい酒造り。
旧銘柄名を引き継ぎ、蔵が息を吹き返した。
蒸し器と放冷機 Photo by Y.Y.
洗米中。麹米は10kgずつ洗い分ける Photo by Y.Y.
蒸し米は、ホイストでつり上げて運んで省力化 Photo by Y.Y.
洪水で被災し、床上げして建て直した新麹室 Photo by Y.Y.
洪水で被災し、床上げして建て直した新麹室