新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・高砂 NO.191

新日本酒紀行 地域を醸すもの 

三重県名張市 「高砂」

山本洋子:酒食ジャーナリスト

ライフ・社会 新日本酒紀行

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↑新調した木桶と蔵元杜氏の大西唯克さん Photo by Yohko Yamamoto

伝統を守り最新の技法で醸す

美酒蔵が昔の銘柄を復活!

 古くから大和と伊勢神宮を結ぶ初瀬街道に、1818年に創業した木屋正(きやしょう)酒造。大和瓦と漆喰壁に虫籠窓が特徴で、主屋などが登録有形文化財に指定される。

 6代目蔵元の大西唯克さんが2004年から杜氏を務め、05年に新ブランド「而今」(じこん)を立ち上げた。透明感があり、ジューシーな味わいで瞬く間にトップ銘柄に躍り出た。

 而今とは禅宗の故事に基づく言葉で、過去や未来にとらわれず、今をただ精一杯生きるを意味する。

 唯克さんは大学卒業後、修業先に乳業会社を選んで食品衛生と管理を学ぶ。その後、広島の酒類総合研究所で酒造りを勉強し、蔵に入った。

 当時は普通酒「高砂」が主な商品で売り上げが悪化。杜氏は45年間同じ人で、技術や品質管理への意識の差を痛感。自ら杜氏になると決めた。

 唯克さんの酒造りは徹底した検証の裏付けだ。工程のどの作業がどう酒質に影響するかを見極めて判断。手作業と機械作業を使い分けて省力化に励む。

 利益の大半を設備投資に回し、清潔な木の麹室、仕込み蔵、照明にも気を使う。労働環境を改善し、朝8時半始業、5時終業にした。

 米は契約農家と連携し、地元の山田錦、全国の上質米を確保する。岡山県雄町の史上初の特上米で純米大吟醸を造り話題に。

 そして今、挑む酒はきれいの先だ。美しさ+ふくよかさを求め、木桶仕込みと生酛造りを開始。伝統を守り最新の技法で醸すが信条。

 創業200周年の年に「高砂」を復活。蔵の両輪を目指す。

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高砂 松喰鶴 純米大吟醸

木屋正酒造・三重県名張市本町314-1 

●代表銘柄:而今 純米大吟醸、而今 純米吟醸、而今 特別純米、高砂 松喰鶴 生酛造り 純米大吟醸 

●杜氏:大西唯克 ●主要な米の品種:山田錦、雄町、愛山、千本錦

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蒸し米はつって取り出し、放冷機に投下 Photo by Y.Y.

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蒸し米はつって取り出し、放冷機に投下 Photo by Y.Y.

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蒸し米はつって取り出し、放冷機に投下 Photo by Y.Y.

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麹造り Photo by Y.Y.

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完成した突き破精麹を確認 Photo by Y.Y.

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完成した突き破精麹を確認 Photo by Y.Y.

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放冷用の木箱が並ぶ。台を支える木製の脚は畳めるオリジナル Photo by Y.Y.