新日本酒紀行 地域を醸すもの「基峰鶴」
佐賀県三養基郡基山町
週刊ダイヤモンド2021年1月30日号
『姉弟で力を合わせて継承する
100年酒蔵』
4代目で杜氏の小森賢一郎さんと営業担当の姉、綾子さん Photo:kiyamashoten
1300年前、白村江の戦いの時代に築かれた基肄城(きいじょう)が立つ佐賀県と福岡県の県境、基山町。
この地で100年前から酒造りを行うのが基山商店だ。
銘柄は基峰鶴で、基山を優雅に舞う鶴の姿から命名された。
杜氏は2014年から4代目の小森賢一郎さんが務める。
酒蔵は1957年建造の鉄筋コンクリート製で、上階から下へ米が移動しながら酒造りが進む高度な設計。最盛期には2500石を誇ったが、日本酒の低迷、焼酎ブームのあおりを受け、経営が逼迫。
東京農業大学を卒業後、梅乃宿酒造で修業していた賢一郎さんは予定を早めて帰蔵し、前杜氏に付いて10年間手伝う。
だが、減少は止まらず、杜氏の引退に伴い蔵を閉じる話が浮上。それに大反対したのが9才年上の姉、綾子さんだ。
100年続く蔵を閉じてはならぬと、姉弟で力を合わせて立て直すと誓う。とはいえ、分からないことばかりで佐賀県内の蔵元たちに教えを請いながら、無我夢中で造って営業した。
原料米は基山産の山田錦を主に、レイホウ、さがびよりなど地元産を使う。
無名でも手に取ってもらえ、「鶴の酒を飲んだ」と覚えてもらえるようラベルを一新。
そうして試行錯誤して醸した初年度の酒が、IWC(インターナショナルワインチャレンジ)で金メダルを取り、光が見えた。
綾子さんは酒蔵に親しんでほしいと蔵の一部を改装し、ギャラリーにした。酒と音楽のイベントなどが開催され、認知度が少しずつ向上。
弟が造って、姉が広める基峰鶴、目指すは500石!
↑ 基峰鶴 純米吟醸 山田錦
●基山商店・佐賀県三養基郡基山町宮浦151 ●代表銘柄:基峰鶴 純米大吟醸 山田錦、基峰鶴 超辛口純米酒 ●杜氏:小森賢一郎 ●主要な米の品種:山田錦、レイホウ、さがびより、きたしずく
バッチ式洗米機 Photo by Yohko Yamamoto
洗米後の米を浸漬中。限定吸水で行う Photo:kiyamashoten
昔の名残で設備が大きい。蔵の2階にある整蒸器と蒸し器、放冷機 Photo by Y.Y.
昔の名残で設備が大きい。蔵の2階にある整蒸器と蒸し器、放冷機 Photo by Y.Y.
【写真】原料米は基山産の山田錦を主に、レイホウ、さがびよりなど地元産
酒造りは杜氏と蔵人の2人で行う Photo:kiyamashoten