新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

週刊ダイヤモンド 新日本酒紀行 地域を醸すもの・櫛羅 NO.195


週刊ダイヤモンド21年2月6日号

新日本酒紀行 地域を醸すもの 千代酒造「櫛羅」

奈良県御所市大字櫛羅

山本洋子:酒食ジャーナリスト 新日本酒紀行

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↑ 3代目で杜氏の堺哲也さん Photo by Yohko Yamamoto

ワイン出身の3代目・杜氏が育てて醸す

 櫛羅産山田錦の酒』

  奈良盆地西南部に位置する御所市は、大和朝廷以前の歴史を誇る神話の里。役行者が修行したと伝わる霊山、葛城山の麓に立つ酒蔵が千代酒造だ。

  葛城山の伏流水の恩恵を受け、天然の軟水で仕込む酒はきれいな味で後口の切れも抜群。

  杜氏を務めるのは3代目の堺哲也さん。実は生まれも育ちも北海道。山梨県のワイナリーでワイン造りをしていたが、東京で開催された酒類研修会で、蔵元の娘と恋に落ち、28歳で結婚。ワインから、奈良の地で日本酒の道へ。

  千代酒造は、最盛期には年間5000石も製造した大きな蔵で、ほとんど大手酒造会社に桶売りしていた。だが注文は徐々に減少し、哲也さんが蔵に入った1995年は3500石、2000年は1000石、05年に注文はとうとうゼロに。その間、高品質な純米酒も少量製造していたが、自社で全量を販売するに当たり、哲也さんが重視したのは原料米だ。

  ワインがブドウに力を入れるように、米作りから自ら行うと決め、酒蔵の周りで山田錦を育て始めた。酒質を上げるには、米質を上げることが必要だと、農薬や化学肥料に頼らない農法を選んだ。

 「窒素分を減らし、収量を減らして育てた米は、酒の味がきれいです」と哲也さん。

   銘柄は、蔵と田んぼの地名の「櫛羅」と命名。その後、葛城山の別名「篠峯」ブランドも立ち上げ、こちらは様々な米の品種で醸す。

  毎年、酒造の条件を変え、ベストを模索し、米作りと酒造りの頂上を目指す。

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↑ 櫛羅 純米 山田錦

●千代酒造・奈良県御所市大字櫛羅621 ●代表銘柄:櫛羅 純米吟醸、篠峯、篠峯田圃ラベル、篠峯ろくまる● 杜氏:堺 哲也 ●主要な米の品種:山田錦、亀ノ尾、雄町、愛山、伊勢錦

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蔵は葛城山麓の高台に立つ Photo by Y.Y.

【写真】自社田の山田錦

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米と精米機は2階に Photo by Y.Y.

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自社田の山田錦 Photo by Y.Y.

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麹米と精米歩合50%以上の米はレーベントクラフトパックに入れてラップ Photo by Y.Y.

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麹米と精米歩合50%以上の米はレーベントクラフトパックに入れてラップ Photo by Y.Y.

【写真】精米から洗米

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全量自家精米 Photo by Y.Y.