新日本酒紀行 地域を醸すもの

新日本酒紀行 地域を醸すもの・田中六五 213 


週刊ダイヤモンド 2021年 6/19号

新日本酒紀行 地域を醸すもの』は福岡県糸島市の「田中六五」を紹介しました

山本洋子:酒食ジャーナリスト

ライフ・社会 新日本酒紀行

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↑田中克典さん。背後は対流を考えて専用設計したもろみタンク Photo by Yohko Yamamoto

『先端技術と古式の形をシンクロさせた

 酒造りで未来へつなぐ』

 田の中の酒蔵で、田中が造る65%精米の酒だから「田中六五」と至って明快。

 地元糸島産山田錦で純米酒のみを醸すのが白糸酒造8代目で杜氏の田中克典さん。目指すのは糸島の地の利を生かす酒造り。仕込み水の脊振山(せふりさん)系伏流水は米が育つ水と同じ水だ。

 築100年以上の蔵にある、長さ8mものハネ木をてこに、1tの重しをぶら下げる槽で酒を搾る。重しを縛るロープと結び方は、漁師町出身の先代杜氏の直伝。克典さんは古式のハネ木と最新醸造技術を合体させ、槽をステンレス張りに変え、ジャケット構造に改良し、-5℃で冷却できる槽搾りにした。適量の空気に酒が触れることで味がまろやかに仕上がるという。

「酒造りは、1に麹というけど、うちは1蒸し、2蒸し、3に蒸し」。特注した木製四角甑(こしき)を使い、麹米と掛米を分け、最適条件で毎日2回ずつ蒸す。「さばけが良く、間違いなく日本一の蒸し米です」。

 蔵の改築を進め、仕込み蔵を冷蔵庫化。新蔵のテーマは「木と無機質の融合」で、旧蔵の梁や柱をコンクリートと機能的に組み合わせ、外光も取り入れて美術館のような酒造空間を実現した。

「酒蔵は継続こそが存続意義」を信念に、地元銘柄「白糸」にも力を入れ、山の麓の田んぼで酒米栽培を始める。

 今年、全国新酒鑑評会へ初出品し、純米大吟醸で金賞を受賞。来期はハネ木搾りをもう1槽増やす計画だ。

 先端技術と残すべき古式の形をシンクロさせた酒造りで、蔵と地域を未来へつなぐ。

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↑ 田中六五

白糸酒造・福岡県糸島市本1986
●代表銘柄:田中六五、白糸
●杜氏:田中克典  ●主要な米の品種:山田錦

【写真】築100年以上の蔵にある、長さ8mものハネ木

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ハネ木搾りの重しは総重量1t。大きな石は90kgある Photo by Y.Y.

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ハネ木搾りの重しは総重量1t。大きな石は90kgある Photo by Y.Y.

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冷却水が流れる-5℃の槽 Photo by Y.Y.

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ハネ木搾り全体 Photo by Y.Y.

【写真】「木と無機質の融合」をテーマにした新蔵

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外光を取り入れ明るく清潔な新蔵の洗米場 Photo by Y.Y.