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新日本酒紀行 地域を醸すもの・純米富士酒 244

週刊ダイヤモンド 2022年 2/5号は京都府宮津市で、無農薬栽培の田んぼから始まるお酢づくりに挑む、飯尾醸造の飯尾彰浩さんにお話を伺いました。
新製品は、お酢ならぬお酒!? 

↑5代目の飯尾彰浩さん

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↑風光明媚な地元丹後の棚田。田植えや稲刈り時には、飯尾醸造の愛用者が集まります。 Photo:Iiojozo

記事は週刊ダイヤモンド 2022年 2/5号より

米酢の原料は酒!
棚田から始まる醸造蔵の新たな挑戦』

 塩と並ぶ世界最古の調味料である酢は、酒を酢酸菌により発酵させ、エチルアルコールを酢酸に変える。ビネガー(vinegar)はワイン(vin)が酸っぱくなったものが語源だ。日本には4世紀ごろ、中国から製法が伝来した。

「江戸時代初期まで、酢は日本酒から造る米酢だけで、大変高価な調味料でした」と、飯尾醸造5代目の飯尾彰浩さん。その後、酒粕から粕酢を造る製法が確立され、庶民にも広まる。

 飯尾醸造は、全国でも唯一、米を育て酒を醸して酢を造る醸造蔵。
米は丹後地域の山里の棚田で、蔵人と契約農家が農薬を使わずに麹米用の五百万石と掛米用のコシヒカリを栽培する。

 酒を醸した後、酢蔵に運び、代々引き継ぐ酢酸菌の菌膜を酒の液面に浮かべると、酢酸発酵が始まる。静置発酵で約100日かけて米酢を造り、さらに300日ほど熟成させて出荷。
機械を使って1日でできる安価な酢と比べ、材料も時間も潤沢に使う。その味は芳醇なこくが特徴で、すし職人がこぞって愛用する逸品だ。

 120年以上続く製法だが、数年前に税務署から酒税を請求された。
最終製品は米酢だが、製造過程で酒ができるという主張だ。その後、米酢製造用の酒に限っては非課税になったが、複雑な思いが募った。

 長年の愛用者から「酢の原料の酒を飲んでみたい」と度々要望があり、この春、数量限定で「純米富士酒」の発売を決めた。もちろん酒税は納める。

 米から酒を経て酢になる尊さ。棚田を守る醸造蔵の新たな挑戦が始まる。

山本洋子:酒食ジャーナリスト 新日本酒紀行

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『純米富士酒』

飯尾醸造・京都府宮津市小田宿野373
●代表銘柄:純米富士酒、純米富士酢、富士酢プレミアム、富士手巻きすし酢、紅芋酢、しゃぶしゃぶに夢中
●杜氏:藤本真充
●主要な米の品種:五百万石、コシヒカリ

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【写真】地元丹後の棚田。田植えや稲刈りに愛用者が集結

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田植え Photo:Iiojozo

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日本海が一望できる丹後の棚田。緑が眩しい! Photo:Iiojozo

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そして、収穫時を迎える黄金色の棚田。 Photo:Iiojozo