週刊ダイヤモンド 2022年 1/29号 新日本酒紀行 地域を醸すもの
広島県三次市甲奴町の酒蔵、「瑞冠」醸造元の山岡酒造さんを紹介しています。
↑蔵外観。山岡克巳さんの曽祖父で酒造り初代の範二郎さんの石碑も Photo by Yohko Yamamoto
『米作りから酒造りまで地元で完結。
伴農繁醸の芳醇辛口な酒造り』
(本文より)
目指す酒造りは「伴農繁醸(はんのうはんじょう)」と、山岡酒造4代目の山岡克巳さん。
「農業とともに繁盛する酒造り」を意味する。
広島県は瀬戸内海に面して暖かなイメージがあるが、蔵が立つ広島県北部の三次市甲奴町(こうぬちょう)は標高350mで、寒暖差が大きく、冬はマイナス15℃まで気温が下がる寒冷地。
だが「この環境こそが米作りと酒造りの適地」と克巳さん。
杜氏は隣の上下町(じょうげちょう)出身の畑中裕次さんが担う。きっちりと発酵させた堅実な酒造りを行い、料理に合う芳醇辛口酒を醸す。
様々な酒がある中でも、20年前に石川県で習得した生酛造りは、生産量の3割を占める。
30年前に実家の酒蔵を継いだ克巳さんは、蔵の前の田んぼで自家栽培するほか、近隣の農家に栽培を依頼し、全量を自家精米で酒を醸す地域完結型を推進。山田錦や雄町、酒造に適した地元米、中生新千本(なかてしんせんぼん)に加え、最も力を注ぐのが亀の尾だ。東日本で復活栽培した昔の品種で栽培は難しく、収量は望めないが、魅力を感じて種を取り寄せ30年がたった。県内でも唯一の亀の尾で醸す「瑞冠」は、今や蔵の顔だ。
「造り手の思い通りに発酵せず、コントロールの難しい米ですが、数年寝かすと個性が輝きます」(克巳さん)。
今、販売中の純米大吟醸は2018年の醸造品だ。
出荷まで手間も時間もかかるが、やわらかで、奥行きあるうま味と切れ味を持つ。お燗もよく、いぶし銀のような味わいだ。
「伴農繁醸」で土地の環境が生み出す味を追究し、循環型地域経済を酒造りから行う。
↑『瑞冠 亀かくし 純米大吟醸』
裏ラベル。熟成させてから出荷。
●山岡酒造・広島県三次市甲奴町西野489-1
●代表銘柄:瑞冠 純米吟醸 山田錦 生酛仕込、瑞冠 純米 山田錦70 超辛口、いい風 純米大吟醸
●杜氏:畑中裕次 ●主要な米の品種: 亀の尾、山田錦、雄町、中生新千本
蔵の横の雄町の田んぼ Photo:Yamaokasyuzou
蔵の横の雄町の田んぼ Photo:Yamaokasyuzou