新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・金紋秋田 NO.277

 

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金紋秋田酒造外観 Photo by Yohko Yamamoto

『熟成と3倍麹、日本酒のうま味の複雑性で勝負を懸ける』

 

(本文)

 無名の蔵の熟成酒「山吹」が、2009年に英国で開催されたIWC(インターナショナルワインチャレンジ)日本酒部門で、名だたる大吟醸酒を抑えて最高賞を受賞した。出品したのは金紋秋田酒造3代目の佐々木孝さんだ。

 1989年、孝さんが30歳で蔵を継いだとき、酒は特徴がなく、営業力も技術力もなかった。

 香り華やかな大吟醸がブームだったが「同じことをしても勝ち目はない」と、正反対のうま味主体の熟成酒へと舵を切る。14年間熟成させた酒が濃醇な味に変わり、IWCで高評価を受けたが、売れ行きは伸び悩んだ。

 熟成酒を造り続けるうち、日本酒が持つうま味の複雑性が見えてきた。新しく造る酒もうま味を重視し、麹の量を3倍に増やす「X3」を開発。

 また、樽の種類によって熟成酒に新たな個性が加わるのでは?と、オーク樽や桜樽、栗樽などに熟成酒を注ぎ、再度熟成をかける二度熟成を試みた。すると、奥深い香りと豊かな味が加わり、熟成酒を進化させることができた。「VINTAGE SAKE YAMABUKI」と命名。フレンチやイタリアンとも相性が良く、国内外から引き合いが増えた。

 昨年から、杜氏が変わり、近郊の酒蔵で副杜氏を務めた菅原康晴さんに。日本酒で使う黄麹以外の白麹や黒麹にも詳しく、搾りの槽(ふね)にも精通。積極的で柔軟性にも富む。孝さんの考える酒質を実現するのにまたとない人材で「奇跡的な出会い」と喜ぶ。

 どん底から価値を掘り起こし、酒のうま味を軸に未来へ進む。

新日本酒紀行「金紋秋田」
 ↑「金紋秋田 X3 RosE」

金紋秋田酒造・秋田県大仙市藤木西八圭34-2
●代表銘柄:VINTAGE SAKE YAMABUKI、山吹ゴールド、X3
●杜氏:菅原康晴
●主要な米の品種:美山錦、キヨニシキ、めんこいな
新日本酒紀行「金紋秋田」
米は甑で蒸す Photo by Kinmon Akita Sake Brewery
新日本酒紀行「金紋秋田」
蒸し米に麹菌を振る Photo by Kinmon Akita Sake Brewery
新日本酒紀行「金紋秋田」
仕込み蔵 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「金紋秋田」
貯蔵蔵 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「金紋秋田」
タンク熟成の酒をさらに樽で熟成 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「金紋秋田」
樽の鏡板に桜を使うと軽やかな味に Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「金紋秋田」
樽の鏡板に桜を使うと軽やかな味に Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「金紋秋田」
栗の鏡板は味をまろやかに Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「金紋秋田」
栗の鏡板は味をまろやかに Photo by Y.Y.