新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・とおの どぶろく NO.278

 
週刊ダイヤモンドの連載『新日本酒紀行 地域を醸すもの』で、
「とおのどぶろく」をご紹介🌾 
米を削って雑味をなくし、きれいな酒を造る……常識とされる今の日本酒造りを覆し、美しいどぶろくを造る佐々木要太郎さん。
 2022年「米のすべてを味わってもらいたい」と、原料が米と米麹と米糠という前代未聞の「その他の醸造酒」の「権化 ごんげ」を完成。
健全な米の力は可能性に満ちている。もっと自然栽培米で醸す、どぶろく醸造所を全国に増やしたいと考えて活動を展開。
日本中の田んぼが無農薬、無肥料で持続可能になる未来を目指して。
新日本酒紀行「とおの どぶろく」佐々木要太郎さん Photo by Yohko Yamamoto

『健全な土壌から生まれる稲の生命力を
ダイナミックに醸す』

(本文)
米を削って雑味をなくし、きれいな酒を造る……常識とされる今の日本酒造りを覆し、美しいどぶろくを造る佐々木要太郎さん。
米農家で杜氏、「とおの屋 要」の料理人だ。
田んぼの特性を見極めて土壌を考え、農薬や肥料は一切不使用。生態系を利用し、周辺環境までも健全な田んぼになるよう改良を繰り返した。
米の品種は途絶えていた在来種「遠野1号」一本で、2002年から栽培を復活する。

 03年に遠野市がどぶろく特区を取得した翌年から、どぶろく製造に着手。「初めは未熟な出来で、お客さんに叱咤されて目が覚めた」。
岩手県工業技術センターへ通い、つてをたどって奈良県の久保本家酒造へ行くなど研究を重ねた。


醸造方法は独特で、米はほとんど削らず、発酵期間は類を見ないほど長期に及ぶ。一般的な日本酒醸造は、酒母ともろみ期間を合わせて長くても1カ月半程度。だが要太郎さんは半年近くも発酵に時間をかける。
その時間は、「米が望むまで」だ。
そうしてできたどぶろくは、クリアな酸味とうま味、クリーミー感、景色を感じる不思議な魅力を併せ持つ。

 今年、「米のすべてを味わってもらいたい」と、原料が米と米麹と米糠という前代未聞の「その他の醸造酒」の「権化 ごんげ」を完成。体験したことがない奥深い香味に、誰もが驚いた。

健全な米の力は可能性に満ちている。もっと自然栽培米で醸す、どぶろく醸造所を全国に増やしたいと考える。
望むのは、日本中の田んぼが無農薬、無肥料で持続可能になる未来。

新日本酒紀行「とおの どぶろく」
↑「とおの どぶろく 水もと 酵母無添加」
●とおの屋 要・岩手県遠野市材木町2-17
●代表銘柄:とおのどぶろく、権化 MO CHUISLE、権化MARO、権化PEAT、 どぶきゅ~る、土のミルク
●杜氏:佐々木 要太郎
●主要な米の品種:遠野1号
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
自然栽培の遠野1号 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
イトミミズが要!雑草の発生を抑えた実験田 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
稲は天日干しに Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
どぶろく Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
料理は発酵を軸に展開 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
納豆のスフォルマート Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
締めの玄米ご飯 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
仕込み室 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「とおの どぶろく」
蒸し器 Photo by Y.Y.