新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・天狗舞 NO.285

 

新日本酒紀行「天狗舞」↑2022年10月に開店した買い物や試飲が楽しめる「mau.」Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行 地域を醸すもの「天狗舞
石川県白山市
山本洋子:日本酒&食ジャーナリスト

ロングセラーの山廃純米酒が近年、美しい味の進化を遂げて感動!穏やかな丸みあるコクと余韻の長さ。値段が安すぎます。

 

伝統を革新し次代へ!

 進化する蔵の山廃純米酒』

 膨らみある山廃の純米酒がロングセラーを続ける車多酒造。1960年代、7代目の車多壽郎さんが、特徴あるうまい酒を目指し、能登の名杜氏、中三郎さんと苦心の末に造り上げた。

   現社長は8代目の一成さん。壽郎さんの長女、寿子さんと大学時代に出会い、大吟醸の熟成酒「吟こうぶり」を飲み、日本酒のおいしさに開眼。壽郎さんに「婿に入れ」と言われ、銀行を辞めて蔵入りし、約30年。

 入社後は、天狗舞と対を成すブランド造りに着手。速醸酛で軽くモダンな「五凛(ごりん)」を立ち上げ、特約店で販売し蔵の2本柱に成長させた。
酒造りの面白さにはまり、酒母をいじり不思議な味の酒ができて、杜氏を焦らせたことも。「それ以来、山廃の酒母室には錠がかかり、醸造責任者以外は入室禁止に(苦笑)」(一成さん)現杜氏の岡田謙治さんからも「方向性を、実務は我々が」と宣言された。笑い話も苦労話も山ほどある。

 2022年10月には試飲が楽しめる「mau.」を開店。70年前の納屋を改築し、酒袋や江戸時代の門扉の材も活用。伝統の漆技術でテーブルも作り、新旧素材を共存させた。また、長男が大学生の時に酒造りの修業を開始。師匠は顧問の中三郎さんだ。伝統を革新し続け、そして次代へとつなぐ。
新日本酒紀行「天狗舞」
「天狗舞 山廃仕込純米酒」
車多酒造・石川県白山市坊丸町60-1
●代表銘柄:天狗舞 山廃純米大吟醸、天狗舞 吟こうぶり、五凛 純米大吟醸、五凛 純米酒 ●杜氏:岡田謙治
●主要な米の品種:五百万石、百万石乃白、山田錦
新日本酒紀行「天狗舞」
酒蔵外観。手前の右の石壺から仕込み水があふれる。Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「天狗舞」
左から杜氏の岡田謙治さん、車多一成さん、常務研究開発室長の徳田耕二さん 
新日本酒紀行「天狗舞」
特等山田錦 
新日本酒紀行「天狗舞」
精米所 
新日本酒紀行「天狗舞」
回転式自動洗米浸漬装置 
新日本酒紀行「天狗舞」
山田錦45%精米 
新日本酒紀行「天狗舞」
速醸酛の酒母室 
新日本酒紀行「天狗舞」
吟醸仕込み蔵 
新日本酒紀行「天狗舞」
仕込み蔵 
新日本酒紀行「天狗舞」
仕込み蔵 
新日本酒紀行「天狗舞」
槽場 
新日本酒紀行「天狗舞」
搾りたての酒 
新日本酒紀行「天狗舞」
古い納屋を改装した買い物と試飲が楽しめる店「mau.」 
新日本酒紀行「天狗舞」
試飲が楽しめる店「mau.」の窓からは田んぼが広がる 
新日本酒紀行「天狗舞」
左側のテーブルは、伝統の漆技術を活用した特注品
新日本酒紀行「天狗舞」
酒の色と香りの違いがわかるグラスも用意
新日本酒紀行「天狗舞」
山廃と速醸の「百万石乃白セット」飲み比べが楽しい 
新日本酒紀行「天狗舞」
「山廃純米酒 GI白山」 
新日本酒紀行「天狗舞」
「スパークリング純米大吟醸 泡影」 Photo by Yohko Yamamoto

取材・撮影/日本酒&食ジャーナリスト 山本洋子

週刊ダイヤモンド2023年1月21日号より転載

2023年1/21号

週刊ダイヤモンド23年1月21日号