新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・喜平静岡蔵 NO.306

新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
静岡平喜酒造 5代目の戸塚堅二郎さん Photo by Yohko Yamamoto

週刊ダイヤモンド23年7月8日号

新日本酒紀行 地域を醸すもの「喜平静岡蔵」

静岡県静岡市駿河区

『50年ぶりに創業の地、静岡で復活!
新進気鋭の純米蔵』

(本文)
徳川家康は、駿府城を築城した折、安倍川に大規模な治水工事を行い、城郭都市駿府を誕生させた。水は南アルプス水系で伏流水の流量が豊富、川に水が少なくても地下には大量に流れ、「平成の名水百選」にも選定。

 この安倍川に面して、2012年に静岡県で最も新しい酒蔵、静岡平喜酒造が復活した。

 元々、静岡で酒蔵を営んでいたが、温暖な気候での酒造りが難しく、縁があった岡山県に蔵を移転し、静岡の方は卸問屋に特化。

「祖父には、創業の静岡で酒造りを復活させたい!という強い思いがありました」と、5代目で杜氏を務める戸塚堅二郎さん。技術の進歩により、静岡でも上質な酒造りが可能になったことで、堅二郎さんの父親がコンパクトな蔵を建て、岡山の蔵はそのままに、50年ぶりに里帰りした。

 堅二郎さんは中学生のとき、初めて岡山の酒蔵を見学。酒造りの面白さにはまり、東京農業大学の醸造科学科に進んだ。酒造りの師匠は、岡山の蔵の備中杜氏、原潔巳さんだが、水も気候も違うため、静岡県沼津工業技術支援センターの力を借りて、静岡吟醸の研究を始めた。

 少量仕込みで丁寧に純米造りのみを行い、醸造期の半年間は蔵にこもって試行錯誤。次第に、果実感のある爽やかな香りとクリーンな味の酒ができ、全国新酒鑑評会で金賞を受賞、雄町サミットでは連続受賞するなど、少しずつ成果も表れた。

 今は99%が地元での消費だが、生酛造りを試すなど酒質の幅も広げ、静岡の新たなブランドとして次のステージへ挑む。

新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
↑「喜平静岡蔵 特別純米酒 誉富士」
静岡平喜酒造・静岡県静岡市駿河区丸子新田1-1
●代表銘柄:喜平静岡蔵 純米酒、喜平静岡蔵 純米酒 雄町
●杜氏:戸塚堅二郎
●主要な米の品種:五百万石、誉富士、雄町、山田錦
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
キャスター付きのこしき Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
キャスター付きの浸漬タンク 
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
コンパクトなステンレス製の放冷機 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
蒸し米作業その1 Photo by Shizuokahirakishuzo
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
蒸し米作業その2 Photo by Shizuokahirakishuzo
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
麹室の扉 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
杉材でつくられた麹室 Photo by Shizuokahirakishuzo
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
麹菌を振る Photo by Shizuokahirakishuzo
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
仕込み室の扉。清潔な蔵内部。 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
仕込み室には、サーマルタンクが12本設置 Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
サーマルタンク Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
仕込み室のサーマルタンク。温度調節がバッチリ。Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
-4℃で冷蔵中の生酒のタンク Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
中には、冷蔵中の生酒が Photo by Yohko Yamamoto
新日本酒紀行「喜平静岡蔵」
コンパクトで清潔な搾り機 Photo by Yohko Yamamoto