新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・推譲 217

週刊ダイヤモンド 2021年 7/17号 の連載 『新日本酒紀行 地域を醸すもの』では井上酒造の「推譲」を紹介。
地元の米と電力を活用し、地域で完結する酒造りを目指しています!

山本洋子:酒食ジャーナリスト

ライフ・社会 新日本酒紀行

https://diamond.jp/articles/-/276292?page=4

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蔵元の井上寛さん(左)と農家の小山田大和さん Photo by Yohko Yamamoto

一つの田んぼで米と電力を!

地域完結型の地酒を目指す

神奈川県足柄上郡大井町

(本文より)

箱根山を真正面に望む足柄平野の東端、酒匂川左岸に立つ井上酒造
代表銘柄は「箱根山」だが、7代目の井上寛さんが力を注ぐのは、地元の米と電力を活用した地域で完結する酒造りだ。

農家で太陽光発電所も営むかなごてファーム小山田大和さんから、米価の安さや耕作放棄など農業の窮状を聞き、農家が安心して米作りができるよう契約田を増やすことを決意した。

2016年に、メダカが泳ぐ田んぼの酒米で純米吟醸酒「左岸」を発売。隣接する小田原市は童謡「めだかの学校」の歌詞の誕生地で、県内で唯一、野生のメダカが生息する。

18年には町内の山間部にある高尾地区で耕作放棄の棚田を復田し、飯米の夢つくしで醸した純米酒「夢高尾」を発売。

20年からはSDGs(※1)に取り組み、コストアップ覚悟で電力を再生可能エネルギーに切り替えた。

21年には「推譲」を発売。米と電力は小山田さんが担い、耕作放棄地を復田し、ソーラーシェアリング(※2)で太陽光発電と稲作を両立。パネルが光を遮らないよう、3mの高さで角度を工夫して設置し、農薬不使用、肥料も無しで収量を減らさず栽培に励む。

電気は電力会社のみんな電力を通して、スマートメーターとブロックチェーン(※3)上の分散台帳で管理を行う。一つの田んぼで米と電力を賄う酒は唯一無二だ。

推譲は二宮尊徳の報徳思想の言葉で、「利が出たら、次の世代、社会のために使う」を意味する。

目指すのは環境に負荷をかけず、地域の未来につなぐ酒。
地域で完結する地酒だ。

※1 SDGs: Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標の略称
※2 ソーラーシェアリング:営農型発電設備
※3 ブロックチェーン:ネットワーク上の複数のコンピューターに分散して情報を記録

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↑『推譲』

井上酒造・神奈川県足柄上郡大井町上大井552
●代表銘柄:純米酒 箱根山、純米吟醸酒 左岸、純米酒 夢高尾、純米酒 仙鳴郷
●主要な米の品種:吟のさと、キヌヒカリ、夢つくし

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農薬は使わずチェーン除草。稲は強くて抜けないが草は抜ける Photo by Y.Y.

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農薬は使わずチェーン除草。稲は強くて抜けないが草は抜ける Photo by Y.Y.