●「燗酒を世界へ」を目指す高崎丈さん。新しいお店『髙崎のおかん』では、食材&酒&人に、「火を入れる」ことをテーマ に、”熱燗と料理をペアリング”体験するお店です。選び抜かれた食材と酒のコースは大感動。体験後、教わった農家さんのお米を取り寄せました
↑原酒は仁井田本家が雄町米で醸した「穏」の酒粕を蒸留 Photo:Niidahonke
新日本酒紀行 地域を醸すもの 福島県双葉町「クラフトジンふたば」
『酒粕と被災地原料を調合
全町避難の双葉町をジンで応援』
(本文より)
国産のクラフトジンに注目が集まる。ジンとは何か?
実は細かい規定はなく、蒸留酒にジュニパーベリーを入れて再蒸留すればOK。「飲む香水」ともいわれ、スパイスや果物などを調合し個性を競う。
日本では2016年に専門蒸留所が誕生して以来、各地のメーカーが参入し商品数は130以上。ご当地素材の日本茶や山椒など、特色を出して世界で勝負する。
そんな中、「福島県双葉町の特産ジンを造りたい!」と熱望したのが高崎丈さん。双葉町で飲食店を経営していたが、11年の福島第一原子力発電所事故で住民避難となり東京へ。いよいよ、22年の夏に全住民の避難指示解除が決まったが、住民ゼロで農業も産業もいったん途絶えた町。自分に何ができるか悩んだ末、町を広めるジン造りを計画した。
廃棄される酒粕や植物をジンとして蘇らせるエシカル・スピリッツ 東京リバーサイド蒸溜所の蒸留責任者、山口歩夢さんに相談し、原料は酒粕に決定。郡山市の仁井田本家が風評被害で苦しむ南相馬市の農家の雄町米で醸した酒の粕を選んだ。
蒸留設備がないため鳥取県の千代むすび酒造に蒸留を依頼。酒蔵を連携してできた焼酎に歩夢さんはいわき市のトマトや宮城県仙台市のマリーゴールドに、シナモンなど複数のスパイスを調合。酒粕由来の甘さに爽やかな風味が重なるジンが完成。この第1弾のジンには双葉町の原料はゼロだが、「それも歴史」と丈さん。
「ふたば」と名付け、ラベルには双葉と無限大を表すアイコンを大きく入れた。
↑クラフトジンふたば 375ml瓶
●エシカル・スピリッツ 東京リバーサイド蒸溜所・東京都台東区蔵前3-9-3
●蒸留責任者:山口歩夢
●米の品種:雄町(福島県南相馬市産)
原酒は仁井田本家が雄町米で醸した「穏」の酒粕を蒸留 Photo:Niidahonke
酒粕を蒸留したベース酒のタンク。香りを確かめる高崎丈さん(左)と東京リバーサイド蒸溜所の山口歩夢さん Photo by Yohko Yamamoto
東京リバーサイド蒸溜所のジンの蒸留機 Photo by Y.Y.
香りと味を確かめる高崎丈さん Photo by Y.Y.