新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・真上 249

週刊ダイヤモンド22年3月12日号は茨城県桜川市真壁町の村井醸造さんをご紹介しています。

#仕切り直しの酒 重要伝統的建造物群保存地区・真壁町の老舗蔵 #村井醸造。現蔵元は12代目78歳の村井重司さん。葬式用の酒から心機一転し、新たな銘柄 #真上 を立ち上げました。製造責任者は36歳の臼井卓二さん。穏やかで杯が進む酒をひたすら目指して精進。

 

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↑酒蔵外観。売店で試飲もOK Photo by Yohko Yamamoto

新日本酒紀行 地域を醸すもの「真上(しんじょう)」

茨城県桜川市真壁町

ライフ・社会 新日本酒紀行

『町を盛り上げ、蔵を仕切り直す酒』

 (本文より)

 筑波山北麓に位置する桜川市真壁町は、江戸時代に陣屋町として栄え、町並みは重要伝統的建造物群保存地区に指定。登録有形文化財の建造物は100棟以上も残る。

 その1棟で酒造りする村井醸造は、1670~80年に近江商人の村井重助が、良い米と水が豊富なことから醸造を開始。

 現蔵元の村井重司さん78歳は12代目だ。主銘柄の「公明」の名前は、公明正大と「こーめー」が米に通じることからで、某政党とは無関係。

 長く葬祭用の酒として利用されたが、人口減少に伴い製造量は激減。

 蔵の起死回生を図り、1年前に立ち上げた銘柄が「真上(しんじょう)」だ。

「高品質な酒で真壁を上質に、盛り上げよう」と重司さんが命名した。

 製造責任者は36歳の臼井卓二さん。他の蔵で修業後、2018年から南部杜氏の伊藤政美さんに付いて技術を学び、今期から中心となって蔵人2人で醸す。

 目指す味はインパクトよりも飲みやすさ。居酒屋さんで喜ばれる酒で、香り控えめ、切れ味良く、するすると自然に杯が進む酒を手がける。

 今期さらに乳酸菌添加酛という新技術に挑む。21年に茨城県産業技術イノベーションセンターの飛田啓輔さんらが、低温でも乳酸を生じ、酵母を健全な発酵へ導く安全性の高い乳酸菌株を開発。共同研究を開始した。「安全で強い酒質、再現性が高い酒に」と卓二さん。

 冬場の製造期間中は休みなしだが「酒造りは面白くて、これが永遠に続いたら~」と苦笑する。

 製造が終われば、蔵の仕切り直し酒「真上」を背負い営業へ。

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↑「真上 純米酒」

村井醸造・茨城県桜川市真壁町72    https://twitter.com/m_sake_brewery
●代表銘柄:真上 純米吟醸、真上 特別純米、公明 大吟醸、純米酒 真壁、特別純米酒 ピュア茨城
●醸造責任者:臼井卓二
●主要な米の品種:山田錦、ひたち錦、八反錦

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【写真】酒蔵、もろみ

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「語りのある街」村井醸造の外観。売店で試飲OK Photo by Y.Y.

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試飲コーナーがあるお知らせ看板も! Photo by Y.Y.

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蔵内部 Photo by Y.Y.

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鉄筋入りのコンクリート製の煙突は高さ約20メートル! Photo by Y.Y.