新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・作 NO.299

新日本酒紀行 地域を醸すもの

三重県鈴鹿市「作」ZAKU

新日本酒紀行「作」
三重県材を多用した社屋 Photo by Yohko Yamamoto

『目の届く小さなタンクで丁寧に醸す、

 究極の透明感と切れ味』

 もぎたての果実のような香味と透き通るような味で人気の「作」は、三重県鈴鹿市の清水清三郎商店の清水慎一郎さんが、1998年に立ち上げたブランドだ。

 輸出も好調で、2021年には新蔵も稼働し、生産能力は1.5倍に拡大。

 この成功の陰には、清水さんの大胆な改革があった。

「作」発売前は大手に酒を納めていたが、将来を見据え、高品質な酒造りへ移行。3トン仕込み用の大型タンクを全て処分し、350キログラム仕込みの小型タンク2本で再始動した。

 杜氏は鈴鹿市出身の25歳の内山智広さんを抜擢し、透明感と切れ味を追求。

 醸すたびに修正を加え、質を向上させた。国内外の鑑評会で最高位を連続で受賞すると、海外からも注文が増え、2本のタンクが4本、そして8本と増え、四半世紀がたった今、50本のタンクで四季を通じて醸造する。

 市場では生原酒の需要も高いが、清水さんは味が劣化するため全て加熱殺菌して出荷。だが、火入れでも生原酒のフレッシュさが出せないか研究を重ね、誕生したのが「作 インプレッション」だ。ずばぬけた爽やかさと透明感ある鮮やかな味に誰もが驚愕した。

 古書「倭姫命世紀(やまとひめのみことのせいき)」の中で、「私は味酒(うまさけ)鈴鹿国から来た」という一節があり、清水さんは当地の歴史や豊かな自然環境の中で育まれた酒を、世界へと発信する。会長を務める三重県酒造組合で、20年に日本酒の地理的表示「GI三重」の指定を受けた。

 三重を仏ボルドーやシャンパーニュのような地域ブランドに、と願う。

新日本酒紀行「作」
↑「作 雅乃智(みやびのとも) 中取り」
●清水清三郎商店・三重県鈴鹿市若松東3-9-33
●代表銘柄:作 玄乃智、作 穂乃智、作 恵乃智、作 奏乃智、作 インプレッション、作 Z
●杜氏:内山智広
●主要な米の品種:山田錦、神の穂、雄町、愛山
新日本酒紀行「作」
瀧原宮の杉の照明 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「作」
雄町と神の穂を埋め込んだ版築壁 Photo by Y.Y.